電車の中で、70代くらいの女性が、ある男性に声をかけました。「お兄さん、カッコええねー」。
男性は兵庫教育大学大学院の小川修史教授で、着ていたのは障がいのある人向けに開発した服でした。頭からかぶって襟元を面ファスナーで留めるトップスと、車いすに座ったままでも着脱できる巻きスカート風のボトムスです。まいどなニュースの記事によると、女性はそれを聞いて隣に座り、20分ほど話し込んだそうです。
言えずにいた「本当は」
女性は、息子さんに知的障がいと身体障がいがあることを打ち明けました。自分はおしゃれが大好きで、本当は息子にもおしゃれを楽しませてあげたかった。別れ際には「こんな服があると知れて、本当にうれしかった」と伝えたそうです。
この「本当は」という言葉が、印象に残りました。着せやすいか、洗いやすいか、本人が嫌がらないか。毎日の服をそこから選んでいるうちに、好きな服を選ぶ楽しさが、いつの間にか後回しになっている。そんなことはありませんか。
記事のコメント欄には、祖母が車いすの生活になってから、ゴムのズボンと簡単なトップスだけになり、アクセサリーは存在も忘れられていた、という書き込みがありました。この書き込みには、200を超える「共感した」が付いていました。
「ないのなら、私が作る」
染色体異常のある息子さんのために、服のブランドを立ち上げたお母さんもいます。オリコンニュースのインタビューで、市販のものは赤ちゃん風のロンパースやパジャマしかなかったころを振り返っていました。選択肢がないまま、着心地の悪い服で過ごすしかない。その現実に「悔しさと怒りが一気に込み上げました」と話しています。
目指したのは、「介護の服」に見えない、普通だけれど少しだけかわいい服だったそうです。できあがった服を家族で「かわいい!」「かっこいい!」とほめると、息子さんはすんなり着てくれた。学校でも先生にほめられて、得意げにポーズをとっていたといいます。
探すときの言葉を一つ
背中側が開く、ボタンの代わりに磁石を使う、スナップで留める。こうした着脱しやすい工夫をした服は、「アダプティブウェア」と呼ばれています。この言葉で探すと、見つけやすくなるかもしれません。ユニクロも2020年に、医療的ケアが必要な子のお母さんたちの声を聞いて、前開きの子ども用ボディスーツを出していました。
着せやすさとおしゃれは、どちらか一つを選ぶものではなくなってきているのかもしれません。
お子さんに、一度着せてみたいと思っている服はありますか。

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